世界中の開発者の手によって広がるデータスタジオの世界

データスタジオでは、標準で用意されているデータ・コネクタ、BIコンポーネントを一般の開発者がカスタマイズすることができる仕組みが準備されています。データスタジオは、BIツールの中では比較的後発ではあり、標準の機能は商用BIツールと比較すると劣っているという見方が一般的です。しかしながら、一般の開発者がカスタマイズできる仕組みが導入されたことで、多くの開発者がコネクター、コンポーネントの開発に取り組むようになると、商用BIツールとの距離も縮まってくるのではないか?と考えられます。

コミュニティ・コネクタ

データ・コネクタとは、データスタジオのデータソースで選択することができる種類を指します。標準のデータ・コネクタは、「Googleアナリティクス」「Google広告」を始めとして、「BigQuery」「スプレッドシート」「MySQL」など18のコネクタが存在します。この18のコネクタは「Googleコネクタ」と呼ばれており、Googleが開発した標準的なコネクタです。

これとは別に、「パートナー・コネクタ」「オープンソース・コネクタ」と呼ばれる種類のコネクタが存在しており、これらを総称して「コミュニティ・コネクタ」と読んでいます。どちらも、サードパーティーの開発者が開発したデータ・コネクタであり、「オープンソース・コネクタ」の方が条件や敷居が高く設定されているようです。この「パートナー・コネクタ」の中には、無料のものだけではなく、有料のコネクタも存在します。しかしながら、「Facebook広告」「Adobe Analytics」「Amazon広告」などGoogle自身では管理しきれない多くのプラットフォームをデータスタジオに接続させることができ、有用な仕組みになっています。

2019年1月23日時点では、「パートナー・コネクタ」は122個が利用可能になっており、「オープンソース・コネクタ」は11個が利用可能になっています。また、「オープンソース・コネクタ」は名前の通り、データ・コネクタのプログラムコードが、Github上で開発されており、機能要望をGithubのIssueで登録したり、既に上がっているIssueを自身で開発し、データスタジオのコミュニティに還元することも可能です。

また、「コミュニティ・コネクタ」は、自身で開発したものを一般に公開して利用する方法だけでなく、一般には公開せずに、自身や自社内でのみといったクローズの環境で利用することも可能になっています。

なお、コミュニティ・コネクタの開発は、G Script(旧Google Apps Script)にて行われており、JavaScriptを一通り触ることができる方であれば、コミュニティ・コネクタ開発自体の難易度は高くありません。

コミュニティ・ビジュアライゼーション

データスタジオの標準のビジュアライズ方法は、分類方法にも寄りますが、豊富とは言い切ることができません。商用BIツールであるTableauであれば、箱ひげ図であったり、ツリーマップやヒストグラムなど多彩なビジュアライズが可能ですが、データスタジオでは標準では用意されていません。

しかし、データスタジオではこのビジュアライズ方法についても、一般の開発者が開発することができる仕組みを提供しています。その仕組みを「コミュニティ・ビジュアライゼーション」と呼んでいます。コミュニティ・コネクタと比較すると、コミュニティ・ビジュアライゼーションは登場が遅く、また実装も複雑になるので、公開されている種類は多くはありません。現在は、開発者向けヘルプページの Data Studio Community Visualizationsにある6種類のビジュアライズが一般に公開されているものと思われます。例えば「サンキーダイアグラム」は遷移を可視化できるビジュアライズの手法ですが、標準のデータスタジオのビジュアライズでは対応できませんでした。そのようなビジュアライズを、コミュニティ・ビジュアライゼーションを使うことで解決できるようになります。

2019年1月23日時点で、「コミュニティ・コネクタ」として利用可能なものは上のリンクであげた6種類しか見つけることができませんでした。

また、コミュニティ・ビジュアライゼーションも、コミュニティ・コネクタと同様に、自身で開発したものを一般に公開して利用するだけでなく、一般には公開せずに、自身や自社内でのみといったクローズの環境で利用することも可能です。

なお、コミュニティ・ビジュアライゼーションの開発は、JavaScriptを用いて行われています。また、グラフの描画については、自身でゼロから実装するのではなく、d3ライブラリやGoogle Chart APIなどを利用して開発するケースが多いと思いますので、そちらの知識が必要になり、コミュニティ・コネクタより難易度が高いのが現状です。

今回、開発したコミュニティ・ビジュアライゼーション

概要

今回は、初のコミュニティ・ビジュアライゼーション開発であったため、とてもシンプルな物を開発しました。開発したのは、上のキャプチャのように、「Questionマークを描画し、そこにマウスオーバーすると、ツールチップで補足説明を表示する」と言う機能を持ったコミュニティ・ビジュアライゼーションです。

通常よくあるコミュニティ・ビジュアライゼーションであれば、データソースに接続し、そこに含まれているデータをビジュアライズすることがほとんどです。しかし、今回は、初の開発であり、開発の難易度や大まかなフローを知ることが目的なので、このようなシンプルなコンポーネントにしています。

シンプルなコンポーネントではありますが、データスタジオのダッシュボードの要素が増えてくると、ダッシュボード内に説明を書いておきたくなることも出てきます。そんな時に、テキストボックスを配置するスペースがあれば、テキストボックスを使うのも良いですが、そのようなスペースが残されていないこともよくあります。今回開発したコンポーネントは、そのような時に、アイコンを1つ配置するスペースさえあれば、ツールチップの形でメッセージを描画することができるようになるので、シンプルでありながら使い勝手は高いと思っています。

利用方法

今回、開発したコミュニティ・ビジュアライゼーションのソースコードは、Githubに置いており、利用方法も同様にGithubのREADME.mdに記載しましたので、下記のリンクからご確認ください。

一般の利用者も、同様の流れで操作することで利用可能です。ただ、本来のコミュニティ・ビジュアライゼーションは、データソースを使って、データを表示するための仕組みになっているのに対し、今回のコンポーネントは、本来の用途とは少し異なる使い方をしているため、途中で無意味な操作などが発生している点にご留意ください(開発時のオプションなどで回避できれば良いのですが、現状回避する方法は分かりませんでした)。

そのほかに考えられるコミュニティ・ビジュアライゼーションの例

今回開発したビジュアライズは、とてもシンプルなものですが、他にも標準のデータスタジオのビジュアライズでは実装できないが、マーケターのニーズとして高そうなビジュアライズの例をいくつか挙げてみました。

広告文レポート

広告の運用レポートを作成している人の中には、広告文別のレポートを作成しているケースがあると思います。このような広告文レポートの場合、レポートの列に実際の広告文の表示レイアウトに沿った形で表示させた方が、見る側にとって分かりやすいレポートになります。しかし、それを実際にやろうとすると、レポートの作成工数が大きくなってしまい、一筋縄には行きません。

実は、画像については、画像URLをディメンションに入れ、ディメンションの設定を変更することで、セル内に画像を埋め込むことが可能ですが、広告文についてはそのようなことは現状できません。そこで、コミュニティ・ビジュアライゼーションを使って、カスタマイズすることで、手軽に効果的な広告文レポートを作成することができそうです。

ワードクラウド

キーワード・パフォーマンスを表形式で数値化してレポートとして利用しているケースは多いと思います。しかしながら、キーワードレポートのように、たくさんの数値が羅列された状態で、そこから何かを読み解くのは非常に難しい作業です。そんな時に「ワードクラウド」的な形で、インプレッション数(や、何かの指標)を文字サイズに置き換えた形でキーワードを表示すると、重要なヒントが見えてくるかもしれません。

さらに、自然言語処理などを使って、キーワード同士の距離を計算し、距離が近いものを近くに表示させることができれば、新たな発見に繋がるかもしれません。

レーダーチャート

他社との比較系のレポートを作成しているようなケースであれば、サマリー・レポートとして、レーダーチャートのようなビジュアライズを使うことも良いかと思います。現状、レーダーチャートをレポートとして利用しようとすると、当然ながら標準のデータスタジオでは対応できず、Excelの出番となってしまいます。実は、商用BIツールであるTableauでも、標準のコンポーネントとしてレーダーチャートは今のところ準備されていません。

まとめ

今回は、とてもシンプルなコミュニティ・ビジュアライゼーションを開発してみました。今回の開発を通して、コミュニティ・ビジュアライゼーションの開発の流れや仕組みなどを理解することができました。コミュニティ・コネクタのように、多くの開発者がコミュニティ・ビジュアライゼーションの開発に乗り出すようになれば、BIツール・ベンダーの勢力図が大きく変わりそうな雰囲気がします。