2020年10月14日にGMPの公式ブログにおいてIntroducing the new Google Analyticsという形で、「Googleアナリティクス4」が紹介されました。
「Googleアナリティクス4」は、2019年に、App + Webプロパティとして登場したGoogleアナリティクスの新バージョンの名称を変更したものです。SEM Technologyでは、App + Webプロパティとして登場した時から、実際に利用しながら動向を追っていたので、名称変更のこのタイミングで、Googleアナリティクス4について書いていきたいと思います。
「Google Analytics 4」登場の背景
GMPの公式ブログ「Introducing the new Google Analytics」によると、
Cookieに依存したデバイス・ブラウザごとの計測ではなく、ユーザー単位での計測を行うこと
が大きな背景と言えるようです。そもそも、今のユニバーサルアナリティクスも登場から長い時間が経過しており、そろそろ大幅なアップデートを行わないと、システムの維持も難しくなってくるのではないかと思っています。
ユニバーサルアナリティクスとの違い
ユニバーサルアナリティクスと比較すると、大きな変化があります。全く別のプロダクトである、と言われてもおかしくないような変化です。計測の仕組み自体は今までと大きな変化はないですが、データ構造の違いやレポートUIの違いなどが顕著に現れています。
特に、データ構造の違いについては大きな変化です。今までのGoogleアナリティクスの場合、計測サーバーに送信される「ヒット」を最小単位とし、これらの集合で一度のサイト訪問を表す「セッション」を構成していました。そして、セッションを1つの単位として集計を行いレポートを作ることが多くありました。3年ほど前に「セッションからユーザーへ」という大きな流れがありました。しかしながら、結局のところ、参照元 / メディアやランディングページなどのディメンションはセッションを1つの単位とした情報であり、目標完了の定義もセッションに紐づいたままでした。またGoogleアナリティクス360を利用し、BigQueryにエクスポートしたときに得られるテーブルのスキーマも1セッションごとにレコードが作成されていました。
しかしながら、新しいGoogle Analytics 4では、「イベント」を最小単位としており、また一連のユーザーのサイト訪問をまとめた「セッション」という概念の重要度が大きく下げられています。
レポートのUIについても、今までと比べて大きな変化がありました。アプリ向けの開発基盤としてGoogleが提供していたFirebase内のプロダクトである「Firebase Analytics」に近いインターフェースとなっています(実際、Google Analytics 4は、Firebase AnalyticsをWebにも拡張したもの、と捉えた方が良いプロダクトです)。また、今までのGoogleアナリティクスでは有料版向け機能であったBigQueryへのデータエクスポートですが、これがGoogle Analytics 4では無料版でも利用できるようになりました。これは、もしかしたらある程度の規模でビジネスを行っている人は、管理画面ではなくBigQueryを使って分析してもらうことを意図しているのかもしれません。
現時点の「Google Analytics 4」の課題は?
App + Webプロパティとして登場し、既に1年以上が経過していますが、Google Analytics 4には様々な課題があります。現時点で自身が感じている課題を列挙すると以下のようになります。
- 今までの「到達ページ」基準での目標設定を行うことができない。
- 現在、「イベント名」を使って目標設定をするしか方法がありません。ページビューのイベントは全てイベント名が「page_view」となっているため、申し込み完了ページなどで、ページビュー以外に別途イベントを送信しなければ、目標設定ができません。
- 目標の完了数を計測しても、「セッション」が定義されていないため、「コンバージョン率」に該当する指標を標準で使えない。
- 目標を設定する大きな目的は、様々なセグメントごとの「コンバージョン率」を把握できるようになることだと思っています。しかしながら、現時点のGoogle Analytics 4では、コンバージョン率という指標自体が消え去っています。
- 参照元除外リストやクロスドメイントラッキングなどのカスタマイズが標準提供されておらず、自身でローコード(JavaScript)を使って実装する必要がある。
- 大規模サイトでは痛手になるように思います。また、参照元除外リストが提供されていないことで、ECサイトなどの決済処理で外部サイトを経由するときの対処を個別で実装する必要が出てきます。
- ビューに相当する概念が存在せず、今までビューを使って実現していたことをどのように実現すべきか考え直す必要がある。
- レポート周りが貧弱であり、Web UIから見れる項目が限られている。データポータルのコネクタも登場したが、制約は以前として大きい。結果、レポートをみるには、BigQuery+ダッシュボードの組合せが必須になる。
- データインポートやGoogle Optimizeとの連携、APIなど、まだ実装されていないものも存在する。
- 実装上のいくつかの制約(仕様)があり、その制約に合わせたベストプラクティスがまだ蓄積されていない。
現時点で「Google Analytics 4」に移行すべき?
Google Analytics 4の課題をたくさん挙げましたが、当然メリットもあります。いくつかのメリットを説明していきます。
アプリとWebの統合解析が可能
もし、自身のビジネスがWebだけでなく、アプリでも展開している場合、Google Analytics 4の導入を早急に検討すると良いでしょう。恐らく今までは、WebはGoogleアナリティクスで計測を行い、アプリはFirebase Analytics(もしくはAppsFlyerなど)で計測を行っていたと思います。そのような計測環境の場合、Webとアプリが分断された計測になってしまい、「Webとアプリの両方を使っているユーザーを統合した解析」を行うのは難しかったはずです。
Google Analytics 4を、アプリとWebの両方に実装することで、そのような統合解析を行うことができます。
BigQueryにエクスポートし、活用できる環境が整っている
Google Analytics 4では、無料版であってもBigQueryに計測データをエクスポートすることができます。このエクスポートされたデータを、SQLを使って任意の条件で取り出し、そしてダッシュボードやその他様々な場面で活用できるような環境が整っているのであれば、Google Analytics 4の導入を検討しても良いでしょう。
自社のCRMデータをBigQueryで管理することができている場合、Google Analytics 4の計測データも同じBigQueryに入ることで、それらを統合した分析ができ、今までにない価値を創出することができるでしょう。
Google Analytics 4の新機能を利用したい
Google Analytics 4には、BigQueryエクスポート意外にも既に新しい機能が発表されています。一番大きいのは、
- 過去28日間にサイトに訪問したユーザーが、今後7日間にコンバージョンする確率を予測する「Purchase Probability(購入確率)」
- 過去7日間にサイトに訪問したユーザーが、今後7日間で「離脱する確率(Churn Probability)」
の2つです。これらの確率を元に、Google Analytics 4でオーディエンスを作成し、そのオーディエンスを元にGoogle広告でアプローチすることができるようになります。
代理店やコンサルタントとしてGAに関わっている
自身のビジネスを拡大するためではなく、代理店やコンサルタントという立場でGoogleアナリティクスを扱っている方々は、今後のGoogleアナリティクスの動きを把握することや、新バージョンが世の中に浸透してきた時に困らないように、今のタイミングから自社サイトやテストサイトなどでGoogle Analytics 4の導入を進める必要があるでしょう。
結論は?
結論としては、「現時点でGoogle Analytics 4に移行すべき?」で書いたようなメリットを享受できるのであれば、今までのGoogleアナリティクスの計測を行ったまま、新しいプロパティを作成してGoogle Analytics 4を追加実装する ことを検討してみても良いと思います。
もし、上記のメリットを享受できない、と考えているのであれば、現時点で無理にGoogle Analytics 4を導入する必要性はないと言えるでしょう。