Google Adsは日々新機能の実装やテストが行われています。これらの新機能の実装・テストの中には、プラットフォーム側の変更のみで行われているものもありますが、それ以外に管理画面の変更を伴う新機能のテストについては一部のユーザーのみを対象にベータ機能として提供されることもあります。しかし、新機能の中にはコンバージョンタグやリマーケティングタグの変更を伴うものも存在します。そして、どうやらこれらのタグはベータ版用のタグが存在する訳ではなく、世界中の全ユーザー共通のタグを利用しているような印象があります。
つまり、このタグの変化をモニタリングしておくことで、今後実装・テストされる新機能を予測することができるのではないか?というのが本記事の趣旨になります。
自身が定期的にモニタリングしている3つのタグ
自身は、ウェブマーケティングに携わるようになって約5年が経ちますが、少なくとも半年に1回位の頻度で、
- Googleタグマネージャ(Web版)のタグ
- Googleアナリティクスのタグ
- Google Adsコンバージョン(リマーケティング)のタグ
の変化をチェックしています。グローバルタグがローンチされた2017年夏頃からは、適宜グローバルタグについてもチェックを行なっています。特にGoogleアナリティクスのタグについては、あるタイミングでまとまった時間をとってタグの中で行われている内部処理を調査したことがあるので、内部処理の多くの挙動を把握しています。
例えば、自分がよく読むGoogleアナリティクスのタグ( https://www.google-analytics.com/analytics.js )の一部を抜粋すると以下のようになっています。
流石にこの状態で読み解くことは難しいですが、Chromeの開発者ツールを駆使してソースコードの整形を行うことで少しだけですが読みやすくなります。
これらのタグをモニタリングすることで、その変化から新しい機能を推測したり、さらにその変化を読み解くことで機能の詳細を掴んだりハックしたりすることができることもあります。
今回発見したGTMコードの変化
今回、Googleタグマネージャのソースコード( https://www.googletagmanager.com/gtm.js?id=GTM-xxxxxxxx )をチェックしていたところ、Google Adsのコンバージョンタグの設定情報が記載されている場所に、下記のようなコードを発見しました。
赤枠部分を抜き出すと、
"vtp_enableProductReportingCheckbox": false,
のように記載されています。ここから、「eコマースサイトにおいて、商品単位のトランザクション・レポート機能が実装されるのではないか?」という推測をすることができます。現在のGoogle Adsのレポートでは、ECサイトであってもコンバージョンに関わる情報は「コンバージョン数」「コンバージョンの価値」程度しか利用することができませんでした。つまり、広告のクリックと購入された商品をGoogle Ads上で見ることができず、必要な場合はGoogleアナリティクスなどのWebサイト側のレポートを利用するしかありませんでした。もし、推測通りのレポートをGoogle Adsで見ることができれば、Google Adsのレポートがまた一段と良いものになると思います。
さらにGoogleタグマネージャのコードを読み進めていくと、下記のようなコードも現れます。
赤枠部分を抜き出すと、
c.vtp_enableProductReporting && (k = h(c.vtp_productReportingDataSource),
k("google_conversion_merchant_id", "vtp_awMerchantId", "aw_merchant_id"),
k("google_basket_feed_country", "vtp_awFeedCountry", "aw_feed_country"),
k("google_basket_feed_language", "vtp_awFeedLanguage", "aw_feed_language"),
k("google_basket_discount", "vtp_discount", "discount"),
k("google_conversion_items", "vtp_items", "items"),
d.google_conversion_items = d.google_conversion_items.map(function(a) {
return {
value: a.price,
quantity: a.quantity,
item_id: a.id
}
}));
のような記載があります。GoogleタグマネージャやGoogleアナリティクス、コンバージョンタグのJavaScriptソースコードを読んだことのない人(ほとんどの人は読んだことがないと思いますが)にとっては意味不明だと思いますが、ここに記載していることを要約すると、
- コンバージョン属性として、Google Merchant CenterのID(と思われるもの)を指定することができる。
- コンバージョン属性として、Feed CountryとFeed Languageを指定することができる。
- コンバージョン属性として、値引額(discount)を指定することができる。
- コンバージョン時に購入された商品の情報(商品ID、金額、数量)を配列で指定することができる。
と読み取ることができます。Feed CountryとFeed Languageについては詳細不明ですが、先ほどの仮説「eコマースサイトにおいて、商品単位のトランザクション・レポート機能が実装されるのではないか?」の信憑性が高まります。
Google Merchant CenterのIDを入力していることから考えると、もしかしたらGoogle Adsの新機能ではなく、Google Merchant Centerの新機能と捉えることもできそうです。が、どちらにしても現状そのような機能は存在しないはずなので、現在テスト中(か、開発中)の新機能の1つである可能性が高いと言えます。
いつ頃に追加されたコードなのかは不明ですが、手元にいくつかあるコンバージョンタグのバックアップから考えると、2017年10月時点ではそのような記載はなく、2018年1月末のソースコードには関連する記載が行われているようです。そのため、2017年末頃にはそのような構想があり、実現に向けて歩み始めていたものと思われます。
まとめ
今回の記事では、Googleタグマネージャ内に設置されているGoogle Adsのコンバージョンタグのソースコードの変化を根拠に、今後Google Adsに追加されるかもしれない新機能を推測してみました。もちろん、いつローンチする機能であるかは不明ですし、ローンチ時の機能が予想通りにナルトも限りません。さらに言えば、テストをした結果ローンチが見送られる可能性も十分にあります。しかしながら、このような方法でも新機能を推測することが可能であることを覚えておくと良いと思います。また、もし興味のある方がいれば、ぜひJavaScriptを勉強し、このようなトラッキングコードの変更のモニタリングに挑戦してみると良いと思います。
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