GTMのインターフェース刷新と新機能「ワークスペース」

Googleタグマネージャー
新機能

記事公開日:

GTMのインターフェース刷新と新機能「ワークスペース」

Googleタグマネージャのインターフェースが2016年8月30日に刷新されました。ただ、ぱっと見ただけでは、「コンテナ」が「ワークスペース」に変わっただけ、のようにも感じます。しかし、実際にタグやルール、変数を作成しようとすると、動きが大きく変わったのがわかると思います。

2015年4月頃にGoogleタグマネージャのバージョンがv1からv2になってから、約1年半経ってのインターフェース刷新です。v1からv2へのバージョンアップ時は、リスナータグが廃止されたり変数やトリガーの名称変更も合わせて行われましたが、今回の変更は主にインターフェース周りとワークスペースと言う新機能の2点に絞られます。インターフェースやワークスペース機能の使い方については、後々いろいろなサイトが取り上げると思うので、ここでは「ワークスペース」機能にの活用ケースについて考えてみたいと思います。


「ワークスペース」とは何か

ワークスペース機能を使ってみた感じでは、ワークスペース機能は「バージョン管理の自由度を高めるための機能」と言えます。エンジニアであれば、Githubを使ったことがある人は多いと思いますが、ワークスペースはGithubにおける「ブランチ」だと思うのが良いと思います(と言ってもタグマネージャを使う多くの人はエンジニアではないので、この例えではよくわからないと思いますが)。

今までのGoogleタグマネージャのバージョン管理機能では、「ブランチ」という発想がなく、その設定工程では一本道を前進する(設定を進める)か後進する(設定を戻す)かしかなく、大規模サイトにおいて複数人で同時に様々な機能(タグ)を追加することが困難でした。そこに「ブランチ」に相当する「ワークスペース」機能が追加されたことによって、開発(設定)する機能単位でワークスペースを作成し、開発(設定)が完了したら「Default Workspace」にマージ(統合)することができるようになります。機能単位のワークスペースで作業している間は、他のワークスペースで行われている開発(設定)を気にすることなくタグ・トリガー・変数を追加・編集・削除することができ、プレビュー(デバッグ)もワークスペース単位で行えます。

ワークスペースの活用方法

ワークスペース機能は、

  • Googleタグマネージャに関わる人が多い場合
  • Googleタグマネージャで管理するタグの変更頻度と変更するボリュームが多い場合

において、最大限に活用できる機能であると考えられます。その上で活用方法を見ていきます。

開発(設定)機能単位でワークスペースを作成する

開発(設定)する機能ごとに切り出して、ワークスペースを作成するパターンです。少人数しかGoogleタグマネージャを触っていないケースでも「Googleタグマネージャで管理するタグの変更頻度と変更するボリュームが多い場合」であれば、開発(設定)する機能ごとにワークスペースを作成するのが望ましいと思います。

例えば、「Googleアナリティクスのイベントトラッキングの設定」と「広告のリマーケティングタグの追加」と言った複数の変更をGoogleタグマネージャに加えようとしている場合、それぞれのワークスペースを作成し、それぞれの変更をそれぞれのワークスペースで行い、最終的にそれぞれをDefault Workspaceに順に統合して公開する、といったイメージです。

このケースでワークスペースを分けるメリットとしては、「GTM上での設定は並行して行うことができ、さらに変更の公開はそれぞれ別のタイミングで実施することができる」点だと思います。上記の2つの変更を行う場合、サイトの運用フローによっては、「Googleアナリティクスのイベントトラッキングの設定」はサイトの制作会社(解析会社)に確認してもらってから公開したい、「広告のリマーケティングタグの追加」は広告代理店に確認してもらってから公開したいというケースがあると思います。そんな時、ワークスペースを分けておくことで、「確認の取れた機能から順に公開する」ことができるようになります。また、そのようなフローがないケースであっても、全てを1つのワークスペースで設定してしまうと、「一部の機能のみを切り出して先に公開する」ことができないため、機能単位でワークスペースを分けて設定を行うことが推奨されます。

図にすると、下記のようになります。

サイトリニューアルに伴ってワークスペースを作成する

サイトをリニューアルすると、設置するタグの内容を大きく変更する必要性が出てきます。リニューアルの規模が大きくなれば、開発環境の時点でタグの設定を行わなければいけないケースに遭遇します。また、設定期間が長引けばリニューアル後のタグの設定を進めながらもリニューアル前の現行バージョンのタグ更新の必要性も出てきます。

そんな時に、「サイトリニューアル」用のワークスペースを作成し、サイトリニューアルに関するタグ設定は、サイトリニューアル用のワークスペースで設定を行っておけば、現行バージョンに対するタグ更新もスムーズに実施できます。

図にすると、下記のようになります。

Environment機能との併用で実現する活用方法

あまり使われていないと思いますが、GoogleタグマネージャにはEnvironment機能(環境機能)というものがあります。この機能では、1つのコンテナの中で、サイトに設置するタグを「開発環境用」「ステージング環境用」「本番環境用」のように分けることで、「設定したタグを開発環境にのみ公開して開発環境で確認と開発、開発が完了したらステージング環境にのみ公開しステージング環境で確認、本番公開時に本番環境用にタグを公開」といったことができるようになります。

まだ具体的な動作確認は行っていないですが、この「Environment」と今回リリースされた「ワークスーペース」機能を併用することで、新たな活用方法が見えてくると考えられます。

終わりに

Googleタグマネージャーの無料版では今回紹介したワークスペース機能では、同時に最大3つまでしかワークスペースを作成できないようなので、大人数で大規模にタグマネージャを使っているような会社だと、無料版では物足りない可能性が出てきます(そのような会社は現時点では日本にはほとんどないと思いますが)。Googleアナリティクス 360スイートにて提供される有料版であれば、ワークスペースは無制限に作成できるようなので、大人数・大規模に使っている会社の場合、他の360スイート製品とあわせて有料版を使うのもありと思います。